万年筆の軸に、いまも硬質ゴムが使われている——素材を数えたら2割あった

ペンを手に取ったとき、その軸が何でできているかを考えることは少ない。素材の記録がある分を分類してみたら、予想と少し違う結果になった。
内訳
- 樹脂・アクリル系 — 39.4%
- その他(複合素材・個別の説明) — 24.0%
- エボナイト — 19.1%
- 金属(真鍮・アルミ・ステンレスなど) — 11.7%
- 木材 — 5.8%
樹脂が4割弱でいちばん多いのは、まあ順当だ。
驚くのは2番目である。
5本に1本がエボナイト
エボナイトは、天然ゴムに硫黄を混ぜて硬くした素材だ。発明は19世紀半ば。プラスチックが普及するより前、万年筆の軸として使われはじめた素材である。
それが、いまも約2割を占めている。素材としては150年以上前のものが、現役で5本に1本を担っている。
樹脂に置き換えられなかったのは、削り出しやすさ、手に馴染む温度、そして経年で色が変わる(褐色に焼ける)ことを含めて好まれているからだろう。ただしこれは推測なので、そう書いておく。
「その他」が24%もある理由
分類しきれなかった24%の中身が、この題材のいちばん面白いところかもしれない。
- 「軸さや:樹脂 グリップ:シリコーンラバー」のように、部位ごとに素材が違うもの
- 「エボナイト、漆、螺鈿」
- 「エボナイト、漆、金箔、蒔絵」
1つの素材名では言い表せない。特に日本の工芸系の万年筆は、素地の上に何層も重ねてできている。素材を1つ選べという分類のほうが、実物に追いついていない。
木材が5.8%しかない理由
木の軸は5.8%にとどまる。ただしこれは「木のペンが少ない」という意味ではない。
木軸を作る工房は、1つの形に何十種類もの木を通す(野原工芸は5つの形で244通り)。製品名の数は少なくても、選択肢の数では大きい。分類の分母をどう取るかで、印象は変わる。
この数字の限界
素材が記録されているのは、登録されている品の約4分の1にすぎない。残りは、まだ調べが追いついていない。分かっている範囲での集計であることは、断っておきたい。
(PencilDBに登録されている品のうち、素材の記録があるものから集計。2026年8月時点)